無効である自筆証書遺言書の内容を実現できた例
事案の概要
Aさんには、内縁関係にある男性がいましたが、当該男性がなくなりました。
男性はAさんに全ての遺産(金融資産)を相続させる自筆証書遺言を書いていましたが、全てパソコンで印字されており、自筆証書遺言の要件を充足せず無効であり、そのままではAさんの相続人に遺産が相続される事態になっていました。
相談者Aさんはホームページなどを調べて自筆証書遺言の要件は満たさず、遺言は無効であって仕方ないと思って遺産の相続は諦めていらっしゃいましたが、何とかできなかと考え、当事務所にいらっしゃいました。
当事務所が実施したこと
Aさんは、男性の生前から、自身が無くなったら、遺産を全て渡すと述べており、相続させる遺言書を男性が記載していることを知っていました。
Aさんにヒアリングしたところ、遺言書の作成は10数年前に実施しているものでした。また作成の当時、亡くなった男性から自分が死んだら財産はすべてAに残す旨を聞いていたとのことでした、
そこで、死亡を原因とする贈与契約が存在したと評価しました。
契約というのは、契約書がなくとも口頭だけで成立します。そこで贈与契約書という契約書ではないが、今回見つかった遺言書が、口頭で行った贈与契約の証拠の一つとして、金融機関を相手に訴訟を提起しました。
通常、金融機関はこのような第三者から「突然贈与を受けているため、預金の払い戻しを行ってほしい」という依頼について、受けることはありません。
しかし、本件では裁判によって預金の払い戻しについて求めた結果、金融機関が相続人に対してAさんに払い戻しをしていいか照会をかけて、相続人から何も異議が出なかったため、スムーズに預金の払い戻しを受けることができました。
結果、遺言書の内容通り、男性の金融資産をAさんが取得することに成功しました。
所感
今回のケースでは、遺言書が無効であることであきらめることなく、他の法律構成を検討して上手に依頼者の意図を実現できた事案です。
今回は特異なケースではありますが、相談いただく内容によっては柔軟な対応が可能ですので、あきらめずにご相談いただくことをお勧めします。
また事務所によっては今回のような事案は断れることもあるかと思いますので、他事務所で難しいといわれたご希望も他事務所を回られることで実現できることもありますので、あきらめずにご相談いただけると良いかと思います。