会社経営者の相続問題
お亡くなりになった方が会社経営者であった場合、相続において様々な問題が発生します。
1.会社資産と個人資産の混同
お亡くなりになった方が会社創業者であったような場合、会社のすべての株式を当該被相続人が有していたという状況も多くあります。
株式を所有する経営者・会社社長が亡くなった際に、生前に遺言書が作成されており、被相続人が亡くなった後に経営を承継する後継者に株式が相続されるような内容になっていれば、その遺言書に従って株式の取得者が決められることになります。
しかしながら、遺言書が作成されていない場合、そして、相続人が複数いるような場合には、遺産分割協議によって株式を取得する者が決まるまでの間は、法律的には、株式は各相続人の共有(法律上は、「準共有」と言います)という状態になります。
そして、この共有に関し、法律上、株式の処分(売却や担保の設定)には相続人全員の同意、株主総会における議決権の行使等には相続人の過半数の同意が必要になります。
さらには、株主として権利を行使する必要がある場合には、原則として会社法106条に基づき議決権行使者を指定しなければなりません。
2.個人資産である株式の散逸
相続はあくまで、個人の資産について発生するものです。
会社は、個人とは別の人格(法人)であり、別の権利主体のため、会社資産についてそ相続が発生することはありません。
しかしながら、会社の資産、例えば本社社屋が個人名義の不動産となっていたり、倉庫が個人名義の不動産となっていることがあります。
会社が個人から不動産を賃借している形式をとり、会社社長が会社から賃料を収受しているようなケースです。
このような場合、事業に供している本社社屋や倉庫が個人の資産であったとして、相続が発生してしまうことがあります。
万一、相続人に会社経営に無関係な親族がいる場合には、この問題を解消するのに多額の費用の支出を要することが想定されます。
3.会社債務の保証について
会社が金融機関から借り入れをしている場合、社長が当該債務の保証人になっていることが多くあります。
相続が発生すると、相続人は、かかる会社の債務の保証債務を相続することになります。
しかし、かかる結果は、経営に関与していなかった相続人の立場からすると不合理といえるでしょう。
4.事前のリスク回避策
会社経営者の相続における上記のようなリスクを回避するためには、どうしたら良いのでしょうか。
(1) 事業用資産の整理
会社の資産と個人の資産が混同しているような場合には、混同を解消すべく名義を整理したほうが良いでしょう。
(2) 遺言書の作成
次に、経営者は遺言書を作成するべきです。。
株式の散逸を防ぐために遺言書を作成する必要があります。
会社経営には、取引先、社員、経営者の親族など、多くの利害関係者が関与しています。
このような利害を持つ人たちから十分に言い分を聞いた上で、将来的に、株式や経営権の帰属をめぐって紛争が発生しないように十分に配慮し、できる限り利害関係者の大部分が納得できる内容の遺言書を作成する必要があります。
具体的には、後継者を会社内部・外部に周知させ、かかる後継者に株式を相続させること、また、各相続人には、遺留分という固有の持分があることから、これに対する配慮もしておく必要があります。
専門家である弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
(3) 遺言執行者を定める
遺言書を書いたとしても、遺言書の内容通りに相続財産を各相続人に帰属させる必要があります。
ただし、遺言書記載時期と相続発生時が異なることから、当初想定した遺留分額以上の遺留分を保証する必要があったような場合や、固有の相続財産について取得を希望する者が現れるかもしれません。
かかる場合に、迅速に遺言内容を実現できるようにすべく、遺言書には遺言執行者の定めを置いたほうが良いでしょう。
(4) 相続財産の調査をおこなう
会社の保証債務を知らないうちに相続していたというようなことがないように、相続対象資産を十分に把握しておく必要があります。
遺言書がないような場合には、遺産は相続人間で共有となり、遺産分割協議が必要となります。
遺産分割協議の対象となる遺産を、相続人間で争いのない状況にすべく、相続財産の調査をしておいた方が良いでしょう。
5.弁護士にご相談ください
当事務所では、相続問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けしており、事業承継に関する知見も豊富にあります。
会社経営者・社長の相続についてお困りの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。