遺産となったマンションに亡き父の同居人(後妻)が住み続けています。もし自分が実家を遺産として取得した場合はマンションを売却したいと考えていますが、立ち退かせることはできますか?
遺産のマンションに、配偶者が居住している場合には、その配偶者には「配偶者短期居住権」(民法1037条1項本文)という権利があります。
配偶者短期居住権とは、残された配偶者が、亡くなった人の所有する建物に居住していた場合、遺産分割協議がまとまるまでか、協議が早くまとまった場合でも被相続人が亡くなってから6か月間は無償で建物に住み続けることができる権利のことです。
2018年の相続法改正により、相続開始後の比較的短い期間における残存配偶者の居住利益を保護するために、配偶者に居住建物の無償使用を認めたのでした。
なお居住建物の取得者は、いつでも配偶者短期居住権を消滅させるよう申し入れすることができますが、その場合であっても、残された配偶者は申し入れを受けた日から6か月間は無償で建物に住み続けることができます(民法1037条3項、1項3号)。
そのため、この配偶者短期居住権の期間内は、被相続人の後妻に立ち退いてもらうことはできません。
なお、相続人間との合意で長期の無償利用を認める「配偶者居住権」という権利も存在します。そのため、自身が遺産として実家を取得し、後妻を立ち退かせることを考えている場合には、後妻と配偶者居住権について合意をしてはいけないことに留意してください。